上場(IPO)を目指す場合、資本を獲得するニーズが高まります。
資金を集めるためにたくさん株式を発行するケースも多いでしょう。
結果、上場を目指した会社の場合、株主が多数になっていることがよくあります。
そのまま上場できれば問題ありません。
株主たちはハッピーです。
しかし、事情により上場を断念しなければならないケースもあります。
このとき複雑になった株主をいかに整理するかは気の重たい問題となります。
オーソドックスな方法としては、社長が株主から株式を買い集めていくことになります。
先方としては上場が見込まれなくなった以上、その株式に用はありません。
ただ、値段の問題があります。
先方としてはもちろん損をしたくはありません。
一方で、買い集める人間としてはできるだけ費用を抑えたいところだし、資金的な余裕がない場合も多いでしょう。
客観的に考えれば上場していない会社の株式なんて、巷では価値を持ちません。
それに対して多額の費用を出して買い集めるのも腑に落ちない面があります。
しかも、対象となる株主は複数です。
一人と交渉するだけならば、いろいろと便宜を図って解決に向かわせることもできるかもしれません。
しかし、相手が複数となると、それも難しくなります。
ある人間だけをひいきすれば、他の株主から突き上げを食らうかもしれません。
また、交渉を何度もやることになれば、こちらが大変です。
こんな上場を失敗したときの株式の後処理の問題、どうすればいいでしょうか?
ここでハマるかもしれないのが、会社分割等による分社を使う方法です。
上場失敗の会社で、会社分割の中の新設分割を使った方法で出口のスキームを設計しました。
まず、今後の事業に必要な部分だけを新設分割で別会社にしました。
この別会社は、元の会社の子会社のかたちでの設立です。
次に、この別会社の株式を元の会社が売却します。
今回設立された別会社の株式は元の会社が保有することになります。
その株式を売却するのです。
売り先は、今回株式を買い集めたいと思っている社長です。
この別会社株式の売買により、元の会社は、株式を失う一方で、現金を手にできます。
あとはこの会社が解散決議をし、清算に入れば、最後は残ったお金を株主に分配してこの話を終わらせることができます。
「お金になりそうなものをすべて現金化させ、それを株主間で分けることで片を付けましょう」
こんなニュアンスです。
機械的にやれるので、個々の株主を相手にするよりもずっと楽にできました。
一方、別会社として残した会社は、これまでどおり事業を継続できます。
そして、株主は社長のみとなり、安定的な経営ができるようになりました。
(それが目的なので、そうなるような設計にしなければいけません)
もうこれで株主との関係で頭を悩ませる必要がなくなったのです。