自己株式の手続 取得
1.自己株式を取得できるとき
会社法では、自己株式の取得について、次の場合を規定しています。
①取得条項付株式につき一定の場合が生じたことを条件として取得する場合
②譲渡制限付株式につき譲渡を承認しない場合の買取請求に対して取得する場合
③株主との合意により有償で取得する場合
④取得請求権つき株式の取得請求に対して取得する場合
⑤全部取得条項付種類株式を株主総会決議に基づいて取得する場合
⑥譲渡制限株式の相続人その他一般承継人に対する売渡請求によって取得する場合
⑦単元未満株式の買取請求があり取得する場合
⑧所在不明株主の株式を競売以外の方法により売却に対して買い取る場合
⑨1株に満たない端数の買取請求に対して取得する場合
⑩他の会社(外国会社を含む)の事業の全部を譲り受ける場合において、この他の会社が有する自己株式を承継する場合
⑪合併後消滅する会社から存続会社が自己株式を承継する場合
⑫吸収分割をする会社から承継会社が自己株式を承継する場合
⑬上記各号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合(会社法施行規則27条)
なお、自己株式の取得について、登記の必要はありません。
2.株主との合意による取得
(1)株主との合意により取得する場合
会社が株主との合意により自己株式を取得する手続は、次のような流れで行います。
① 取得事項の決定
株主総会の決議(定時でも臨時でも可)によって、あらかじめ次の事項を定めます。
個々の取得事項については、株主総会の普通決議をもって、取締役(取締役会設置会社では取締役会)に授権することができます。
ⅰ)取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
ⅱ)株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(その株式会社のの株式等を除く)内容及びその総数※
ⅲ)株式を取得することができる期間(この期間は1年を超えることができない)
② 取締役の決定(取締役会の決議)
取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会)は、①の決定に従い、自己株式を取得しようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定める必要があります。なお、この場合の株式取得の条件は、決定毎に均等に定めなければなりません。
ⅰ)取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
ⅱ)株式1株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数もしくは額またはその算定方法※
ⅲ)株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
ⅳ)株式の譲渡しの申込の期日
※「株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(帳簿価額)」は、分配可能額を超えることができません
③ 株主への通知
会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、②の事項を通知しなければなりません。(公開会社では、公告をもってこの通知に代えることができます)
④ 譲渡しの申込
③の通知を受けた株主は、所有する株式の譲渡しの申し込みをしようとするときは、会社に対してその申込にかかる株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしなければなりません。
⑤ 譲受の承諾
譲渡しの申込を受けた会社は、株式の譲渡しの申込期日に、株主が申し込んだ株式の譲受を承諾したものとみなされます。但し、株主の申込総数が②で決定した取得総数を超える場合は、案分比例した数(下記算式)の株式の譲受けを承諾したものとみなされます。
「取得総数÷申込総数×当該株主が申し込んだ株式数」
(1に満たない端数は切り捨て)
(2)特定の株主からの取得
特定の株主から自己株式を取得する場合は、次の点が変わります。
① 株主総会での決定事項
前記(1)①の事項に加え、株主に対する取得事項の通知を、特定の株主に対して行う旨を株主総会の特別決議で決定します。
なお、この株主総会においては、特定の株主は議決権を行使することができません。
② 株主に対する通知
会社は、特定の株主からの取得をしようとするときは、他の株主が、特定の株主に自己も加えたものを株主総会の議案とすることの請求(売主追加請求権)をすることができる機会を与えるため、取得事項を決定する株主総会の日の原則2週間前までに、株主全員に対して、売主追加請求権を行使することができる旨を通知しなければなりません。
③ 株主からの請求
会社から②の通知を受けた株主は、特定の株主に自己も加えたものを株主総会の議案とすることを、取得事項を決定する株主総会の日の5日前までに会社に請求することができます。
※売主追加請求権が適用されない場合
次の3つの場合は、売主追加請求権は適用されません。
ⅰ)市場価格のある株式の特則
取得する株式と引き換えに交付する金銭の額が、決議日前日の市場価格または公開買付価格のいずれか高い額よりも低いとき。
・・・市場価格などよりも自己株式取得の対価の方が低ければ、特定の株主にのみ利益を与えることにならないため。
ⅱ)相続人などからの取得の特則
株主の相続人その他一般承継人から、その相続その他の一般承継により取得した株式を取得する場合(非公開会社に限る)。
・・・非公開会社の場合、会社にとって好ましくない者が株主になることを防止する必要があるために行う自己株式の取得であるため(但し、その相続人その他一般承継人が株主総会においてその株式について議決権行使をした場合を除く)。
ⅲ)特定の株主からの取得について定款に規定した場合
取得価額が市場価額を超えない場合等の一定の場合に、他の株主が売主追加請求権を行使できない旨の規定があるとき
・・・株式の発行後に、定款変更により売主追加請求権を行使することができない旨の規定を設ける、またはその規定について定款変更(その定款規定を廃止する場合を除く)使用とするときは、その株式を有する株主全員の同意が必要
(3)子会社からの取得
会社がその子会社から自己株式を取得する場合は、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議により、(1)①の取得事項を決議します。
3.自己株式取得における財源規制
自己株式の取得(1.の①~⑥、⑧、⑨の場合)は、分配可能額を超えてすることができません。また、子会社からの取得の場合、市場取引等による自己株式の取得の場合にも財源規制が課されています。
【参考 市場取引等による取得】
会社が市場取引または公開買付けの方法で株式を取得する場合は、取得価格等の決定、株主に対する通知、譲受の申込、及び特定株主からの取得の規定は適用されません。
取締役会設置会社では、市場取引等で自己株式を取得することについて、取締役会決議で定めることができる旨の定款規定を置くことができます。この場合、取得事項の決定は、株主総会または取締役会で決議することができます。