相続で株式が分散することを防ぎたい
3 相続で株式が分散することを防ぎたい
① 株式と相続
株主に相続が発生すると、その所有していた株式は不動産などと同様に相続財産となります。これは、上場株式でも非上場株式でも同じです。
相続財産となるからには、遺産分割の対象となります。例えば、その遺産分割の内容として、「○○会社株式90株は、長男、次男、三男で30株ずつ相続する。」といった合意がなされると、株主の数が増えることになります。
当然、株主の管理を自社で行っている中小企業では、相続人が増えていくと管理の負担が重たくなってきます。
また、相続を通じて会社にとって好ましくない者が株主となってしまうこともあります。
多くの中小企業では、株式の譲渡制限の規定が定款に設けられていますが、これは売買や贈与のような取引をけん制するだけに止まります。相続のような自然発生の場合までは、防ぐことは出来ません。
突然、相続で株式を引継いだ者が経営に口を挟んできて困惑するなどといったケースも考えられます。
② 株式分散等の防止策
上記のような問題を防ぐためには、下記のようなタイプ分けにより、いくつかの方法が考えられます。
(あ)強制的に株式を取得できるようにしておく
相続が発生した場合に、強制的に株式を会社が譲り受けることが出来るようにしておく方法があります。
例えば、定款の規定の中に、「相続が発生した場合、会社は、相続人に対し、株式の売り渡しを請求できる」旨の規定を設けておくことが出来ます。(※この方法については、下記を参照ください)
また、『取得条項付き種類株式』を発行することで、強制的に譲受を出来るようにしておくことも考えられます。
(い)任意の取引を行う
株式を相続した相続人に対して、通常の売買として株の売却を交渉する方法ももちろんあります。
買主としては、株式を発行している会社や他の株主等が考えられます。
会社が買取る場合は、自己株式取得に関する手続が必要となります。その点以外は、通常の任意の取引なので、価格や支払方法等は当事者の合意により自由に決定されます。
(う)その他
株式を種類株式の中の議決権制限株式とすることも一つの案でしょう。
相続人が株主であることには変りませんが、会社経営に対する口出し(議決権の行使)だけでも制限しておけば、問題を回避できる場合もあるでしょう。
③ 定款の規定による会社の買取り
上記の中では、定款の規定による株式の買い取りが、オーソドックスな方法だと思われます。事前の準備としては、定款内にその規定を入れるだけで済んでしまいます(登記は要りません)。
定款内に「相続が発生した場合、会社は、相続人に対し、株式の売り渡しを請求できる」という規定を置いていた場合、会社の株主に相続が発生したときに、会社は相続人に対して、会社に株式を売り渡す旨の請求をすることができます。なお、会社が『請求できる』のであって、売却を請求するか否かは、その都度会社側で判断できます。
この規定によって、会社が買取りを請求するための要件は二つあります。
まず、会社が相続の開始を知ったときから1年以内に相続人に請求しなければなりません。
もう一つは、財源規制です。この株式を買取るための費用としては、会社内の資産の余剰部分(分配可能額)のみを利用することができます。資本に欠損が生じているような場合は、減資の手続なども組み合わせる必要があります。
会社より請求がなされた場合、原則として売買代金は当事者の合意によります。それでも価格の折り合いがつかないときは、裁判所への申立てにより、決定をしてもらいます。相続人側としては、価格の交渉は出来るけれど、売却を拒否することは出来ないことになります。
最後に注意点を。この規定は、「とりあえず定款内に盛り込んでおけば便利」と思いがちですが、導入は慎重にしたほうがいいでしょう。へたをすると、大株主に相続が発生した場合に、少数株主が逆転により会社の支配権を取得してしまうケースも考えられるからです。