会社再生の場面で
会社分割を使った再生スキームの例を解説します。
民事再生などを利用したスキームよりも、コスト面、スピード面、秘密性による企業価値の保持などの面で優れた面の多いスキームと言えます。
いわゆる『第二会社方式』という呼び名で、注目も集めている手法です。
(株)池袋商事より、今後も継続させる事業と会社継続に必資産と負債を持ち出し、新設分割によって新会社を設立する例でご説明します。
まず、不要な資産や過分な債務を池袋商事に残したまま、今後も継続させる事業とそれに伴う資産や負債を持出すことを計画します。
手法としては、『分社型の新設分割』による子会社への承継ということになります。
子会社へ承継される、事業に伴う資産は1億円ということに見積もりました。
まだ、付随して移転させる負債を9000万円とするため、資本金は1000万円となります。
(負債を一切持ち出さない方法も可能です)
あとは、株主総会などを経て、手続に必要な書類を準備した上で法務局に登記申請を行います。
こうして、新設分割により川越サービス㈱(資本金1000万円)を新規設立しました。
物的分割であり、川越サービスの株式は100パーセント池袋商事が保有することになります。
事業が流れ出た代わりに、事業を有する会社の株式を全て保有することになるため、実質的な池袋商事の企業価値は減少していないという理論になります。
債権者の同意は?
ちなみに、この再生スキームでは、債権者保護手続を省略することも可能です。
全ての債務を池袋商事に残すか、移転した債務を池袋商事が引き続き保証するかたちにしておけば良いのです。
善悪は別として、結果的に、銀行に知らせることなく会社分割まで終わらせてしまうこともできます。
会社分割・・・その後・・・
事業と必要な資産を持ち出した川越サービスは、今後は事業に尽力するだけです。
経営を圧迫していた超過債務もなくなったため、健全な会社として旅立つことが可能です。
ちなみに、ここで商号を変更して『池袋商事』を名乗れば、従前の会社と何も変わっていないように見せることもできます。(債務の引継ぎの怖れはあります)
一方、旧池袋商事は、『清算』に入ることになるケースがほとんどでしょう。
清算の方法としては、債権者からの放棄などを取り付けて任意のかたちで終わらせるパターンと、特別清算や破産などの裁判所が関与するケースがあります。
清算作業の工程として、池袋商事が保有する川越サービスの株を売却することも重要な作業となります。
第三者のスポンサーや従業員が株式を買い取って経営を引継ぐケースが考えられます。
また、できるだけ池袋商事の他のモノを現金に換えておきます。
任意の清算でも、配当として債権者に支払うことになり、破産の道を歩むにしてもモノが多いと破産管財人の報酬が増える可能性があるためです。
不動産は?
池袋商事が持っていた不動産については、会社分割を使って川越サービスへ移転させたほうが、登録免許税等のコストが抑えられます。
しかし、担保を消してから移転することを考えると時間がかかってしまうため、緊急を要することの多い再生案件では、不動産を前の会社に残したままでも急いで分割を完成させたほうが良いでしょう。
また、不動産についた抵当権の債務額の合計が不動産価格を上回っている状態(オーバーローン)のケースでも、そのまま新会社が支払い義務を引継ぐのはもったいないため、不動産を残していったほうがよいでしょう。
会社分割と同時に不動産も移転すべきは、抵当権が付いたまま不動産を持っていっても良いケース=そのまま抵当権者へ返済をすることができるケースとなります。
不動産を残して行った場合は、後で任意売却で池袋商事から事業に必要な不動産を売ってもらうというかたちで取得することになります。
通常の売買によって不動産を第三者が買う金額以上ならば、抵当権者が配当額を了承して担保の抹消に協力してもらえる可能性は高くいでしょう。
協力しなければ、競売を実行するしかありませんが、時間もかかり、落札価格も通常売買よりも下がるのが普通だからです。
・・・以上が、会社分割を使った再生スキームです。
会社の良い部分を摘出し、残りの悪い部分は会社と共につぶしてしまう方法です。
会社分割をするにつき満たしておくべき条件としては、そのまま会社を清算した場合よりも、会社分割の再生スキームを利用したほうが債権者が回収できた金額が多いようにしておくことです。
この条件を満たさなければ、必要な部分で債権者の協力を得られず、また事後的に会社分割の無効を訴えられることになりかねません。
【将来性ある事業だけでも生き残らせる】
会社の中には様々な事業が含有されている場合があり、全てが会社に貢献するものばかりではなく、中には会社の足を引っ張ってしまっている事業もあるかもしれません。
このまま行くと共倒れだという場合に、『将来性のある事業だけを取り出して育てる』ということも会社分割の手法を使えば可能です。
将来性のある事業と、それに伴う資産と負債を持ち出して新設分割によって新会社を作れば、たちどころに健全な会社が生まれます。
これまで会社の不調によって銀行からの融資が受けられなかったようなケースでも、分割後は融資を受けられるようになる可能性は高いでしょう。
残された分割会社のほうは、これまでどおり事業を継続するか、場合によっては清算などの手続に入ることになるかもしれません。
それでも、会社全体の業績悪化によって有望な事業までもが劣化してしまうよりは、親会社が倒れても、子会社だけでも活躍する道を残すほうがベターだと思われます。
なお、従来は、債務超過の会社が会社分割をすることはできないのではないか、という論点がありました。
会社法では、債権者保護の問題を別問題としたことで、債務超過の会社でも会社分割ができるということで決着しています。

